マスクの色分けで残業は減るのか!?

看護師の日常

2019年4月に働き方改革が施行されました。看護師もその例外ではなく、病院・施設にも具体的な取り組みが求められます。
当院では、看護職の業務改善の一つとして、日勤と夜勤でマスクの色を変更しようと考えています。
今回は、看護職の残業とマスク変更の効果について考えます。

看護職における「働き方改革」とは

こちらは、厚生労働省ウェブサイトからの抜粋です。
働く人々が、個人の事情に応じた多様で柔軟な働き方を、自分で「選択」できるようにするための改革です。働く方の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現することで、成長と分配の好循環を構築し、働く人一人一人がより良い将来の展望を持てるようにすることを目指します。

日本看護協会では、国の「働き方改革」を受けて、看護における働き方改革の目標を「働き続けられる仕組みを創る。その仕組みは実現可能で、持続可能な仕組みであること、看護職が生涯にわたって、安心して働き続けられる環境づくりを構築し推進する」としました。そして、全ての看護職個人が生涯にわたり健康で安全に働き続けられる働き方と、個人の多様な属性等に応じ、組織が看護職個人の働き続けられる働き方を実現するための方策について検討を重ねてきました。

看護師の時間外労働の実態

日本看護協会が実施した「2021年 看護職員実態調査」による「超過勤務の有無」と「実際に行った超過勤務時間の合計」が表あるのでご覧ください。

同調査では、19.8%が「超過勤務しなかった」と回答していることからもわかるように、全ての看護師が残業しているわけではありません。しかし、78.4%が「超過勤務をした」と回答していることを考えると、ほとんどの看護師が残業を経験していると言ってよいと思います。
また、超過勤務時間の平均は、1ヵ月で17.4時間となっています。勤務形態にもよりますが、1か月に20日の出勤だとすると、平均して約50分の残業を毎日していることになります。平均して毎日1時間弱の残業があると考えると、看護師の超過勤務が常態化していることがうかがえます。

当院の時間外労働の実態

当院の看護師の時間外労働については、会議でもらった人事課のデータを参照したところ、一人当たりの残業時間の平均は12時間でした。(看護師は約250人)
「2021年 看護職員実態調査」と違い、超過勤務の有無のデータはなく、超過勤務時間のデータのみです。最大値は41時間で、最小値は0時間でした。
当院の超過勤務時間の平均は12時間ですので、実態調査の17.4時間よりはかなり少ないです。とはいえ、1ヵ月に20日の出勤だとすると、平均して約36分の残業を毎日していることになります。つまり、当院も看護師の超過勤務が常態化していることがうかがえます。
患者の急変やスタッフの欠員などによる残業はなくすことはできないでしょうが、残業時間を減らす取り組みは可能であると思います。

看護師の残業が多い原因

では、看護師が残業する原因はなんでしょうか?
看護師の残業が多い原因として考えられるものを挙げていきます。

  • 慢性的な人員不足
  • 看護記録などの書類作成・入力業務
  • 患者の急変対応やナースコール対応
  • 院内研修や勉強会
  • 勤務時間終了直前の指示や声掛け

本来は、きちんとデータ化すべきであると思いますが、なかなかそのような時間を設けることはできません。よって、今回はあくまでも現場レベルで感じた原因ということでお願いします。
この中で、特に気になるのが、「勤務時間終了直前の指示や声掛け」です。
例に挙げると、このような感じです。

漫画では、日勤終了間際の声掛けでしたが、夜勤の場合でも同じことが起こります。
勤務終了直前の看護師に他の医療従事者が声を掛けるのは、看護師の勤務がわからないことが原因の一つです。他の医療従事者からしたら、目の前の看護師が日勤なのか夜勤なのかの区別はつかないのですから、とりあえず目についた看護師に声を掛けるというのが当然の行動となります。

他施設での業務改善

目の前の看護師が日勤なのか夜勤なのか区別できない問題に対し、業務改善を行った施設があるのでご紹介させてもらいます。
日本看護協会が実施する「看護業務の効率化先進事例アワード」で「2019年度最優秀賞」を受賞したのが、一般社会法人熊本市医師会熊本地域医療センターのユニホーム2色制でした。
日本看護協会は、「引継ぎ可能な業務による残業が多いという課題を、日勤と夜勤の労働者を可視化することにより、一気に解決した」と評価しています。
この受賞後、2022年時点で100施設以上がユニホーム2色制を導入しているそうです。
さらに、この取り組みを応用した施設があります。滋賀県甲賀市の仁生甲南病院は、ユニホーム2色制ではなく、マスク2色制を取り入れました。
このマスク色制は、「夜勤者の把握がしやすく、わかりやすい」という声が聞かれ、残業時間の減少にも効果があったようです。

自施設の業務改善

当院でも、2023年9月からマスク2色制の導入を検討しています。2023年当初は、「ユニホーム色分け制」の導入を検討していましたが、残念ながら中止となりました。
「ユニホーム2色制」ではなく、「ユニホーム色分け制」!? それには、当院のユニホーム変更の歴史が関係します。
当院の看護師のユニホームは、2017年度までは白色1色でしたが、2018年度の途中から4色に変更になりました。白、赤、青、緑の4色の生地です。今思えば、この時点で、白と赤は日勤用、青と緑は夜勤用というように決めておけばよかったのですが、ユニホームが古いので変更するだけになってしまいました。新しい4色のユニホームは、その中から好きな色を4枚借りるというシステムなので、看護師によって使用しているユニホームの色が違うようになりました。
そこに新しく夜勤者用のユニホームを導入したら、何が何だかわからなくなってしまいます。追加のレンタル料も発生します。これでは、費用と効果が合致しません。
全てのユニホームを回収して、新しく2色に絞って統一するという案もあります。しかし、せっかく今のユニホームが定着してきたのに、このタイミングで変更するのは不合理だという意見もあります。
そこで挙がってきたのがマスク2色制です。
こちらは、今のユニホームをそのまま使用できます。また、ユニホームを追加したり変更したりする時に発生するコストもかかりません。色付きマスクを納品するメーカーにもよりますが、現在使用しているマスクとほぼ同等の価格となることが予測されます。

2023年9月、サンプルのオレンジ色マスクを夜勤者さん使ってもらいました。色が派手すぎるという意見はありましたが、普段使用している白マスクとの区別はつきやすかったです。その後、薄い青マスクを使用してもらいましたが、白マスクとの区別がつきにくく、気づきにくい印象となりました。
このように、夜勤者用のマスクの色決めに難航していたので、看護師全員にアンケートを取ることになりました。色付きマスク投票です。最終決定感は看護部となりますので、あくまでもアンケートです。集計結果のナンバーワンが採用というわけではありません。マスク総選挙は9月に実施されていますので、結果は10月中に出るでしょう。いったい何色のマスクになるのでしょうか?


マスク2色制を導入したことによる効果は、また違う記事で書きたいと思います。
マスク2色制により、看護師の残業時間が減ることを期待しています。

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